COPD(慢性閉塞性肺疾患)

検査のお話

過ごしやすい季節になってきていますが、皆さん体調はどうでしょうか?
もう風邪やインフルエンザの流行は収束してきていますが、未だに咳が止まらない・痰が切れないなどの症状に
悩まされている方はいませんか?
もしかしたら、それは『COPD(慢性閉塞性肺疾患)』と言われる疾患の症状 かもしれません。
皆さんもTVなどで耳にする機会が増えていると思いますので、今回はこの 『COPD』についてお話していきます。
COPDとは?

COPDは、主に長年の喫煙習慣が原因で発症し、呼吸機能が低下していく肺の病気です。以前は『慢性気管支炎』と『肺気腫』と別々に呼ばれていましたが、現在はこの2つを総称して『COPD』と呼ばれています。この2つを区別することは困難で、その治療にも大きな違いはありません。日本には約530万人の患者さんがいると言われています。

原因と症状

COPDの原因は、タバコなどの有害な空気を吸い込むことによって、空気の通り道である気道(気管支)や酸素の交換を行う肺(肺胞)などに障害が生じる病気です。その結果、空気の出し入れがうまくいかなくなるので、
通常の呼吸ができなくなり息切れが起こります。
原因の中でも特に言われているのが喫煙です。20〜30年にわたって、たくさんのタバコを吸っている人の
およそ10〜15%がCOPDになります。肺機能は年齢とともに衰えるため、特に高齢者が問題です。
日本ではこれまで男性の喫煙率が高かったため、患者のほとんどは中年以降の男性です。

北米では死亡原因の第4位、寝たきりの原因の第2位を占める重要な病気で、日本でも喫煙率の増加と高齢化社会の
到来によって、今後患者数が増えると予想されています。
2011年には、1万7000人弱の人が亡くなっており、男性の死亡原因としては第7位でした。

COPDの代表的な症状は、「動作時の息切れ」と「慢性的なせき・たん」です。 息切れは歳のせい、せきやたんは風邪のせいと思われがちであり、本人が気付き難い症状のため、家族から症状を指摘することが重要です。
COPDが重症化すると階段を上がることはもちろん、座っていても息切れ症状が酷くなり、
日常生活に大きく支障をきたすようになります。

COPDの代表的な症状

COPDの検査と診断

COPDの診断は、スパイロメーターという機械を使った呼吸機能検査(スパイロ検査)によって行います。
スパイロ検査はCOPDの診断には欠かせない検査で、肺活量と息を吐くときの空気の通りやすさを調べます。
スパイロ検査実施の様子
※スパイロ検査実施の様子

COPD患者さんでは、息が吐き出しにくくなっているため、1秒量(FEV1)を努力性肺活量(FVC)で割った
1秒率(FEV1%)の値が70%未満のとき、COPDと診断されます。
また病気の進行に伴い1秒量が予測値(年齢、性別、体格が同じ日本人の標準的な値)よりも低くなっていきます。COPDの病期は予測1秒量に対する比率(対標準1秒量:%FEV1)に基づいて分類されます。
(下記の表を参照)

病期 特徴
Ⅰ期  軽度の気流閉塞  FEV1≧ 80%
Ⅱ期  中等度の気流閉塞  50% ≦ FEV1< 80%
Ⅲ期  高度の気流閉塞  30% ≦ FEV1< 50%
Ⅳ期  極めて高度の気流閉塞  FEV1< 30%

気管支拡張薬投与後の1秒率(FEV1/FVC)70%未満が必須条件
1秒量(FEV1)        : 最初の1秒間に吐き出せる息の量
努力性肺活量(FVC)  : 思い切り息を吸ってから強く吐き出したときの息の量
1秒率(FEV1%)      : FEV1値をFVC値で割った値
対標準1秒量(%FEV1) : 性、年齢、身長から求めたFEV1の標準値に対する割合

COPDの重症度は呼吸機能に加えて労作時の呼吸困難などの症状や運動能力低 下の程度、併存症の有無、
憎悪の頻度などから総合的に判定されます。

COPDの重症度

また、COPDとほかの病期を鑑別するために、肺機能検査以外にも、動脈血の酸素濃度を測る検査、
胸部X線写真撮影、心電図検査、胸部高分解能CTなどを行うこともあります。

COPDの治療

COPDは治療法がない病気とされていましたが、最近では治療に関する様々な研究が進み
「治療が可能」な病気と位置づけられるようになりました。
治療をすることにより、病気の進行を遅らせ、息切れなどの自覚症状を軽くし、運動能力を高めます。
治療を行うことで、同年代の健康な人と同じような生活を送ることができます。

実際の治療は、さまざまな方法を組み合わせて行います。
 * 禁煙
  治療の基本です。
  喫煙を続けるとさらに肺機能が低下するので、まず禁煙を実行します。
  すでに病気になっていても、禁煙をした場合と喫煙をつづけた場合では、長生きできる年数が違ってきます。
 * ワクチン接種
  インフルエンザなどの気道の感染による急性憎悪を防ぎます。
 * 薬物療法
  COPDの治療薬は、気管支拡張薬とステロイド薬に分類できます。
  気管支拡張薬を使用すると肺機能が改善し症状も多少軽快しますが、
  まったく症状がなくなるわけではありません。
  改善が不十分な場合は、強力なステロイド薬を内服することで病状が改善することもありますが、
  長期間使用すると副作用があるので、医師の診察を受け、十分に相談した上で使う必要があります。
 * 呼吸リハビリテーション
  息苦しさをやわらげる理学療法や呼吸に関係する筋肉を鍛える運動療法、体重の減少を防ぐ栄養管理なども、
  自覚症状を改善させるために重要な治療方法のひとつです。
  安静にしていれば病気が回復するという考えは、COPDにおいては誤りです。
  毎日の散歩でもいいので、コツコツと長続きする方法を実践していきましょう。
 * 在宅酸素療法
  COPDが進行し、低酸素血症になった時に導入します。
  現在では保険の適応が受けられるようになっています。

COPDの治療のさまざまなアプローチ
以上のような治療を継続することで、生活に支障が出るほどまでに重症化することを防ぎ、良い身体状態を長期間
保つことができるようになりました。
もし皆さんの家族などにCOPDの可能性があるなら、早めに医師へ相談することお勧めします。
当院でも、診断に欠かせない呼吸機能検査(スパイロ検査)を受けることが可能です。
気になることや心配なことがあれば、気軽にご相談ください。

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