高齢者の便秘・下剤

お薬の話

私たち薬剤師は、便秘に悩む患者さまに、「水分を多めにとってください」、「食物繊維の多い食事を心がけてください」、 「適度な運動をしてください」とお話しすることがあります。しかし、高齢の患者さまのなかには、「あまりご飯は食べられない」、「足が悪いから、運動はできない・・・」というお話をされる方も多く、生活習慣を改善することが難しい場合があります。

高齢になると、運動能力の低下、筋力、内臓機能の低下といった身体の機能が徐々に低下していく傾向にあります。 このような低下が原因で、高齢者の多くの人が便秘に悩んでいます。その中で便秘を改善するためには、お薬で少しでも解消させてあげることが大事であり、下剤と上手につきあっていくことが必要になるかと思います。

今回は、高齢者の便秘の原因と下剤の特徴をお話します。


高齢者の便秘の原因


食べ物は、口に入ると胃で消化されて、腸で栄養が吸収され、便となり排せつされるのですが、内臓機能が低下すると、腸内環境や蠕動(ぜんどう)運動も悪くなり、便を出すことが困難になります。また、神経の老化により便意がある事に気が付かなかったり、忘れてしまったりして、便を出すチャンスを逃してしまう人が多いようです。便意を感じたときに便を出さないと、便秘になる確率は上がる一方です。
そして、持病などで、服用しているお薬のなかには、便秘になりやすいものもあります。

このように、高齢者には便秘になってしまう原因がたくさんあります。
そこで、手助けになるのが下剤です。しかし、一口に下剤といっても、いろいろで、便通の状態に合わせた選択が必要です。以下に下剤の種類と特徴をまとめました。


種類

薬品名(製品名)

特徴

 
 大
 腸
 刺
 激
 性
 下
 剤

 植物性製剤

 センナ
  ・アローゼン®
 センノシド
  ・プルゼニド®
  ・センノサイド®
 植物エキス製剤で、便の中に水分がしみ込んで、便が
 柔らかくなります。腹痛もなく自然排便ができるような
 作用があります。
 長期連用により、耐性が生じ、頼りがちになることが
 あります。

 大腸刺激性剤

 ピコスルファートナトリウム
  ・ラキソベロン®
  ・シンラック®
 腸の粘膜を刺激することにより、蠕動(ぜんどう)運動
 を促進して排便を促します。
 用量調節しやすく、自然な排便習慣の回復が期待
 できます。
 大腸検査の前処置にも有用です。

 直腸刺激性下剤

 炭酸水素ナトリウム・無水リン酸二水素ナトリウム
  ・新レシカルボン®坐薬
 腸内で、炭酸ガスを発生し、蠕動(ぜんどう)運動を
 促進することにより排便を促します。

 塩類下剤

 酸化マグネシウム
  ・マグミット®
 腸管内に水分を吸収させることにより、便は軟らかく
 なり増大し、その刺激により便意をもよおします。
 大量の水分とともに服用すると効果的です。
 習慣性が少なく長期服用が可能です。

 膨張性下剤

 カルメロースナトリウム
  ・バルコーゼ®
 多量の水分を含んで膨張し、排便を促します。
 習慣性はなく、作用は比較的ゆるやかで、痔疾患の
 ある方にも使用できます。

 浣腸剤

 グリセリン
  ・グリセリン®浣腸
  ・ケンエーG®浣腸
 直腸を直接刺激する、グリセリンや、大腸を刺激する
 成分が配合されています。
 腸の蠕動(ぜんどう)運動を高めて排便を促します。

高齢者の場合は、個人個人に合わせたできる限りでの食事や運動を行い、現在より低下しないように排便を習慣づける事は大切です。便秘は、腸疾患や腸の周囲の腫瘍など、大きな病気が潜んでいることがあります。便通のことで気になることがあるときは、自分で判断せず、かかりつけの医師、薬剤師、看護師等にご相談ください。

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