造影剤とは
放射線のお話
前回の放射線のお話『エックス線透視(エックス線TV)』 でも少し触れた『造影剤』ですが、どういったものかご存知でしょうか。
放射線のお話『レントゲンに写るもの』 の回でレントゲンやCT画像が作られる原理を説明いたしましたが、その原理を利用し体内の目的の場所のエックス線吸収率を変化させて人工的に『影』を『造』る『薬剤』が『造影剤』です。目的の場所や疾患を見つけやすくするために用いられます。
血管造影剤
- 血管内に投与し血流に乗せ、目的の場所に到達したタイミングでCT等の撮影をしたり透視で観察したりする造影剤です。
- 悪性腫瘍など、血管を豊富にもつ場所にはより多くの造影剤が集まるため、他の場所より白く写ります。
- 血管が狭くなったり詰まっていたりすると血流が滞ったり途絶えたりするので、正常に血流があれば本来なら白く写るはずの場所が白くなりません。
- そういった色の変化で異常を発見できるようになります。
- また造影CTをもとに3D画像を作成すれば、臓器や疾患の形状の把握に役立ちます。
消化管造影剤
- 多くの方がよく知っている白い液体のバリウムのほか、透明な液体の造影剤もあります。
- 胃や腸の粘膜に付着させたり造影剤で充満させたりしてその形を浮かび上がらせます。
- 多くは発泡剤(二酸化炭素)や空気をもちいて胃や腸を膨らませ、粘膜表面の状態、粘膜の伸びの悪さ、ポリープなどの隆起、潰瘍などの陥凹、その他消化管にできる疾患を発見しやすくします。
- 上部消化管の場合は口から、下部消化管の場合は肛門から投与します。
尿路造影剤
- 血管用の造影剤を投与後すると血管が豊富な腎臓はすぐに造影されますが、時間経過とともに尿管、膀胱へと造影剤が移動していきます。そのタイミングで撮影すると尿路が白く浮かび上がります。
- 尿道から逆行性に注入するタイプの造影剤もあります。
胆道造影剤
- 胆嚢や胆管に特化した造影剤です。
- 血管内投与をして肝臓で代謝をさせ胆道に集積させるものや、内視鏡を使って直接注入するタイプの造影剤があります。
上記以外にも検査したい場所に合わせた造影剤の種類がたくさんあります。
造影剤は治療薬ではありませんが、この先の治療を的確なものにするために病気を評価するとても重要な薬剤です。
ただし、薬剤である以上は副作用のリスクも存在します。
血管内投与の場合、吐き気、嘔吐、頭痛、めまい、発疹、かゆみ、くしゃみ、咳、不整脈、血圧低下、腎不全、意識消失、死亡などがあります。症状は投与後すぐに現れる場合と、数時間~数日経ってから現れる場合とがあります。注入時の血管外漏出を起こすこともあります。
バリウムなどでは消化管内で固まって通過障害を起こしたり、憩室や虫垂に入り込んで炎症を起こすことがあります。経口投与では誤嚥することもあります。
検査の前に問診票を書いていただいて、そのリスクをできるだけ軽減させたり、使用できない患者に誤って投与しないようにチェックをし、副作用のリスクとそれによって得られる利益を説明したうえで検査を行っています。
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