身の回りの放射線

放射線のお話

みなさんは放射線が意外と身近にあることをご存知でしょうか。

病院や診療所、検診施設などで検査を受けるのとは別に、私たちが普段生活している時にも常に放射線を浴びています。その放射線はどこから来るのでしょうか。 病院等で検査の時に使うような人工的に発生させる「人工放射線」に対し、自然界に元々存在する放射線を「自然放射線」といいます。自然放射線には以下のようなものがあります。

大地からの放射線

地下にある放射性物質から放射線が発生しており、地上にいる私たちはこれを浴びています。花崗岩には放射性物質が多く含まれており、地域によって放射線量は変わりますが、これによって浴びる量は一年間で約0.48mSv程となっています。
また、地中は線量が多くなる傾向にあります。
大地から採れたものを建材に利用しますので、建造物からも放射線は発生していることになります。

宇宙からの放射線

宇宙空間には様々な種類の放射線が存在しており、空気と距離により減弱して地上に届きますが、これによって浴びる量は一年間に0.39mSv程となっています。飛行機に乗ると宇宙への距離が縮まると同時に空気の密度も下がるため、宇宙からの放射線量は多くなり、東京~ニューヨーク間の往復では0.1~0.5mSvの放射線を浴びることになります。これは検診胸部レントゲン撮影の際に受ける0.05mSvよりずっと多い量です。胸部レントゲンがいかに安全な線量であるかがわかると思います。
宇宙飛行士が着用する宇宙服は、これらの放射線に耐えられる構造となっています。

空気からの放射線

空気中にはラドンなどの気体が存在し、放射線を出していることがわかっています。これによって浴びる量は一年間に1.26mSv程となっています。 吸い込んだ空気から呼吸器系への影響があるのではないかと言われています。

食物からの放射線

水や食物にもカリウムや炭素など放射性物質が含まれており、食物の種類によってもその量は異なりますが、一年間に0.29mSv程を浴びていると言われています。

これらを合わせて、私たちは一年間に2.4mSv(世界平均)の自然放射線を浴びていることになります。我が国においてはこれよりやや少ない量であると言われており、その中でも関東地方は関東ローム層による遮蔽があるため日本の中でも少なくなっています。

ここまで聞くと、放射線が怖くなってくる方もいるかと思いますが、線量と人体への影響の相関を見てみると、とても低い量であることがわかります。

ただし、被ばく量は少ないに越したことはありませんので、当院でも必要最小限の放射線量で検査が済むように、強さや照射時間などを適宜調節しております。

さて、怖いイメージの放射線ですが、医療目的以外でも私たちの生活に役立っています。

主な用途は以下の通りです

非破壊検査
人体以外でも、壊すことなく中身の状態を把握することができます。
厚みを測定、隠れた亀裂などの発見、骨を取り除いた魚の切り身の取り残し確認、空港などでの荷物検査などに利用されます。
じゃがいもなどへの照射
発芽を遅らせたるため、また品種改良ために用います。
害虫駆除(不妊化による駆除)にも利用されます。
煙探知機
電極間にアルファ線を常時流しておくと、煙によってアルファ線が遮られたときに警報が鳴る仕組みです。
地学、歴史の調査
地層や、遺跡等の年代を、放射線の特徴である半減期から導き出すことができます。
プラスチック等の硬化
自動車の部品、建築材料など多くのものに利用されます。

被爆国である我が国は、他国よりも放射線に対して恐怖を抱く傾向にあるようですが、このように正しく使えば安全で便利なものです。

これを機会に、少し認識を変えてみてはいかがでしょうか。

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