貧血

検査のお話

皆さんも一度は“貧血”という病名を耳にしたことがあると思います。
 よく聞くけど一体どんな病気?
 貧血になるとどんな症状がでてくるの?
今回はこの「貧血」について、当院の検査室が行っている検査のお話を交えて見ていきましょう。
<そもそも貧血って?>
 私たちの体の中には体重のおよそ8%と言われる量の血液が流れています。 その血液の中には赤血球、白血球、血小板といったさまざまな成分が存在します。 健康診断などでよく目にするものではないでしょうか。
貧血はこの中の赤血球ととても深い関わりがあります。
赤血球の数が少ない、赤血球の大きさが小さい、ヘモグロビンの量が少ない。 これらをまとめて貧血と呼んでいます。
<赤血球やヘモグロビンが少ないとなぜ貧血になるの?>
 赤血球は体中に酸素を運ぶとても重要な役割を担っています。
赤血球の中にあるヘモグロビン(血色素)と呼ばれる成分がこれを可能にしています。
そのため、赤血球の量やヘモグロビンの量が少ないと体中に酸素を運ぶことができなくなります。
<貧血になるとどんな症状がでるの?>
酸素不足による症状として息切れ、めまい、倦怠感などがあります。
またこれを補おうとして心臓がたくさん血液をからだに送りだそうと働くために脈拍が上がり動悸がつよくなることもあります。
また、ヘモグロビンは血の赤い色を保っている色素でもあるため、頬の赤み等が薄れ顔面蒼白にもなります。
<貧血かどうか知るためにはどんな検査があるの?>
 “貧血”といっても実際のところ貧血にはとても多くの種類があり、1つの検査では原因がつかめない事も多々あります。
そのため、いくつか検査を行ってどんなタイプの貧血であるかを調べます。
以下は当院で行っている主な貧血検査の項目と基準値になります。
当院で行っている貧血の指標となる検査の項目と基準値
  検 査 項 目 基 準 値
血 
液 
一 
般 
検 
☆白血球数 3300〜9000 /μl
赤血球数 男性:430〜570万 /μl
女性:380〜500万 /μl
血色素量
(ヘモグロビン)
男性:13.5〜17.5 g/dl
女性:11.5〜15.0 g/dl
ヘマトクリット 男性:39.7〜52.4 %
女性:34.8〜45.0 %
MCV 85〜102 fl
MCH 28.0〜34.0 pg
MCHC 30.2〜35.1 %
☆血小板数 14.0〜34.0万 /μl
  ★網状赤血球 4〜19 ‰
生化学検査 血清鉄 男性:44〜192 μg/dl
女性:29〜154 μg/dl
T I B C (総鉄結合能) 男性:235〜461 μg/dl
女性:220〜433 μg/dl
U I B C (不飽和鉄結合能) 男性:170〜250 μg/dl
女性:180〜270 μg/dl
★フェリチン 男性:18.6〜261 ng/ml
女性:4.0〜64.2 ng/ml
☆貧血に関する項目ではないが、検査の方法により血液一般検査として同時に測定が可能。

★当院内では測定を行っていないが、外注委託検査を行っている為、当院でも検査可能。
※左記の基準値は当院での基準値になります。 施設・測定方法により値が若干異なります。
 上記の通り、貧血に関わる検査では性別により基準値が変わります。 また、年齢でも大きく変化してきます。
<これらの検査でわかることは??>
先述の通り、貧血には多くの種類があるため今回は貧血の中でも比較的頻度が高い “鉄欠乏性貧血”を例に少し検査の内容を見てみたいと思います。
<鉄欠乏性貧血とは・・・?>
特に若い女性に多いタイプの貧血で、鉄不足によって起こる症状です。
ヘモグロビンを作るために体の中にある鉄を使うため、鉄が不足すると貧血になります。
<検査結果はどのような値になってくる?>
以下、鉄欠乏性貧血の特徴的なデータの動きです。
赤血球数 ヘモグロビン
MCV MCHC 血清鉄 フェリチン T I B C U I B C
次にこれらの項目がなにを見ているかを説明します。
赤血球
ヘモグロビン
赤血球やヘモグロビンが少ないとなぜ貧血になるの?のところでどんな役割を担っているかをお話ししましたが、実際にこれらがどのくらいあるかをみています。
貧血になると数値は基準値より低くなってきます。
MCV 赤血球の大きさの平均をみています。
MCVが基準範囲内である場合を正球性、小さい場合を小球性、大きい場合を大球性と表現します。上記の表より鉄欠乏性貧血は小球性ということになります。
MCHC MCHCが基準範囲内である場合を正色素性、低い場合を低色素性と表現します。
上記の表より鉄欠乏性貧血は低色素性ということになります。
※MCHCは基準値よりも高くなることがほとんどないため、高い場合の表現はありません。
血清鉄 血中に存在している鉄の量をみています。
血中の鉄はトランスフェリンというたんぱく質に結合した状態で存在しています。
鉄欠乏性貧血は、この血清鉄の不足から始まります。
フェリチン フェリチンは貯蔵鉄とも言われ、肝臓や脾臓に蓄えられている鉄のことです。
血清鉄が不足してくると、この貯蔵鉄を使って鉄不足を補おうと体が反応します。
蓄えられていた鉄を消費するため、鉄欠乏性貧血では徐々にこちらも不足していくことになります。
U I B C 不飽和鉄結合能と言い、トランスフェリンと結合していない(結合することが出来る)鉄の割合をみています。
血清鉄が不足し、貯蔵鉄から補われた鉄はトランスフェリンと結合していないため、鉄欠乏性貧血のように血清鉄が下がりフェリチンが下がっている場合、UIBCは増加します。
T I B C 総鉄結合能と言い、トランスフェリンと結合する事ができる鉄の総量を見ています。
血清鉄+UIBC=TIBCとして表されます。
鉄が不足するとトランスフェリンの産生を増やしてトランスフェリンと鉄が結合しやすい状態をつくろうと体が反応します。
TIBCはトランスフェリンの量との相関性があるとされ、鉄欠乏性貧血では増加します。

以上が貧血の指標となる項目の大まかな説明になります。
貧血には様々な種類があるため、これだけでは説明できない場合も多々ありますが、必ず健康診断で測定される項目もいくつか含まれています。

貧血には今回お話した以外にも様々な原因があり、その原因によって治療方法も異なります。
症状や、検査結果を見て気になることがございましたら担当医にご相談下さい。

※鉄欠乏性貧血の赤血球      



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