胃がんリスク検診(胃がんABC検診)

検査のお話

今年も葛飾区の特定検診が終わり、結果はお手元に届きましたでしょうか?
各種検査の結果において気になることがあれば「検査のお話」も参考にしていただき、要再検がありましたら精密検査をおすすめいたします。
今回は、今年から葛飾区特定検診のオプション検査として追加された、“胃がんリスク検診(胃がんABC検診)”についてお話ししたいと思います。

胃がんリスク検診(胃がんABC検診)について

ヘリコバクター・ピロリ菌感染が胃がんの原因になることはよく聞かれると思います。

では、他のピロリ菌感染の有無を調べる検査やバリウム検査、内視鏡検査がある中で、今回の「胃がんリスク検診」とはどのような意味があるのでしょうか。

まず、胃がんリスク検診は癌そのものを見つける検査ではありません。
「胃がんリスク検診」は血液検査で、ピロリ菌IgG抗体とペプシノゲンを調べ、その結果の組み合わせから4つの群
(A〜D群)に分けて胃がんになるリスクがどの程度あるのかを判定する検査です。
現在全く症状がなくても、将来的に胃がんになる危険度を知り、適切な精密検査、治療へ進むきっかけになるかと
思います。
逆にいえば、リスクが少ないA群の人たちが不要な検査を受けなくてすむ点もメリットです。


胃がんリスク検診(胃がんABC検診)

胃に感染するピロリ菌がなぜ血液でわかるの?

血液では、「ピロリ菌IgG抗体」を調べます。
ピロリ菌に感染すると、生体はピロリ菌に対する抗体を作ります。この「ピロリ菌IgG抗体」を調べることによりピロリ菌に感染しているかどうかがわかります。しかし、正確に言うと、現在ピロリ菌に感染中かどうかはわかりません。
この抗体はピロリ菌を除菌してもすぐに消えるわけではありませんので、抗体があるということは、現在ピロリ菌に感染しているか、または過去に感染していたと推定されます。
   *基準値 ピロリ菌IgG抗体 10U/mL以下

ペプシノゲンって何?

ペプシノゲン(PG)は、胃粘膜の分泌腺から胃の中に分泌され、胃酸により蛋白分解酵素のペプシンとなり消化酵素として働きます。
主に胃酸を分泌する胃底腺粘膜から分泌されるPGⅠと、胃粘膜全域と十二指腸から分泌されるPGⅡがあります。胃が萎縮するとPGⅠ、PGⅡの分泌量が減少します。このPGⅠとPGⅡの濃度と比率(PGⅠ/Ⅱ比)をみることで、胃粘膜の炎症と萎縮の範囲等を知ることができます。
   *基準値  PGⅠ:70.1ng/mL以上 または PGⅠ/Ⅱ比:3.1以上

なぜ、ピロリ菌に感染すると胃がんのリスクが高くなるの?

ピロリ菌の中にはCagA(キャグエー)という毒素を作るタイプがあります。日本人が感染するピロリ菌の90%以上がこのタイプでトゲの生えたような形をし、胃の表面の上皮細胞にCagAを注入します。
注入された細胞は異常増殖し、炎症(胃炎)を起こしやすくなります。
繰り返し炎症を起こすと、胃粘膜は萎縮し、萎縮度が高くなるほど癌化しやすくなり胃癌のリスクが高まります。


なぜ、ピロリ菌に感染すると胃がんのリスクが高くなるの?


ピロリ菌感染以外にも、ストレス、喫煙、食生活(塩分の過剰摂取、大量のアルコール、添加物)、遺伝子異常なども胃がんの原因といわれていますが、WHOでは「ピロリ菌をもっとも危険の高い部類の発癌因子」と規定しています。

冒頭にも書きましたが、この「胃がんリスク検診」は、あくまでもリスクを知るための検診です。
検査結果に応じて内視鏡検査等の精密検査が必要となります。
また、ピロリ菌の感染が判明している方、明らかな上部消化管に症状がある方は胃がんリスク検診の対象とはなりませんので、医師にご相談ください。

胃がんに限らず、早期発見・早期治療は大切です。
自覚症状のない方に少しでも興味をもっていただけたら幸いです。

関連記事

「検査のお話」の記事一覧