坐薬

お薬の話

皆さんは、これまで坐薬を使った経験がありますか?
第2回でも少し触れましたが、「坐薬」を座ってのむ薬だと思っている方はいらっしゃいませんよね?
坐薬とは肛門や膣から挿入する薬のことで、外用剤…つまり口からはのめない薬です。今回は様々な坐薬について紹介します。


1. 内服薬(のみ薬)と坐薬の違い

主な内服薬は消化管で吸収され、肝臓等で分解された(代謝)後に血液に吸収され全身へ運ばれます。その際、消化管を荒らしてしまったり、代謝により薬の効果が弱まったりしてしまうことがあります。
一方、坐薬は腸から直接血液に吸収されますので、肝臓での代謝を受けることなく全身へ運ばれます。そのため、内服薬に比べると効果の出る時間が早くなります。
また坐薬は、吐き気のある時や飲み込みの難しい患者さんなど、口から薬をのめない場合でも使うことが出来るという利点があります。しかし、内服薬ほど種類が多くないことや、外出先等で使いづらい・夏場は持ち歩きが難しい(後述)等の欠点もあります。

 
2. 坐薬の種類

坐薬には、挿入した患部に効かせたいタイプと、挿入する事により全身に働かせたいタイプがあります。
  薬効 主な商品名
全身に
働かせたい
坐薬
消炎鎮痛剤 ボルタレン®サポ※ アルピニー®坐剤
鎮痛剤 アンペック®坐剤※ レペタン坐剤
制吐剤 ナウゼリン®坐剤※
抗不安剤 セニラン®坐剤
抗痙攣剤 ダイアップ®坐剤
患部に
効かせたい
坐薬
痔疾患用剤 強力ポステリザン®軟膏※ ネリプロクト®軟膏※
駆虫剤 フラジール®膣錠※ エンペシド®膣錠※
抗菌剤 サラゾピリン®坐剤
オキナゾール®膣錠※ アデスタン®膣錠※ クロマイ®膣錠※
ホーリン®V膣錠※
下剤 新レシカルボン®坐剤※
(※:当院採用薬)


また、坐薬は主成分(薬効成分)と基剤(坐薬の形をつくるもの)からなっていますが、この基剤の種類によっても大きく二つに分けることができます。

基剤の種類 特徴 主な商品名
油脂性基剤 体温により溶ける ボルタレン®サポ※  アルピニー®坐剤
水溶性基剤 腸内の水分を吸収して溶ける ナウゼリン®坐剤※   ダイアップ®坐剤
(※:当院採用薬)

 
3. 坐薬の保存法 

「基剤」の違いにもよりますが、体温で溶ける坐薬が多いので、冷蔵庫に入れておくことが一般的でしょう。「室温保存」との表記のものもありますが、この場合の「室温」とは1℃から30℃のことをいいます。真夏はその範囲を超え、体温程度の高温まで達してしまう事もありますので充分注意が必要です。

  また、一度溶けて再度固まったものは、変質・変形のおそれがあるので使用しないで下さい。
このように夏場の持ち歩きが難しいのは、溶けないように工夫する必要があるからです。今お持ちの坐薬の保存方法をもう一度しっかりと確認しましょう。


 
4. 坐薬の使い方
(1)可能であれば、排便をすませる
  ↓
(2)冷蔵庫保存の坐薬は、使用する分だけ冷蔵庫から出しておく
   (少しやわらかくなり、入れやすくなります。手で握って温めるのも良いでしょう)
  ↓
(3)手を洗う
  ↓
(4)坐薬を包装から出し、とがったほうに水や油(ワセリン等)をつける
  ↓
(5)力を抜き、挿入する
  ↓
(6)数十秒押さえ、できれば横になる




以上が基本的な使い方ですが、それぞれの坐薬にあった使い方があるので、 その都度確認してください。
  
また子供の場合は、「1回半分」「1回2/3個」といった指示が出る事もありますが、その場合は清潔なカッター等でななめに切り、元々のとがっていた先端部分を使用します。残りはもったいないようですが、清潔が保たれないことがありますので捨ててください。
使用の際には、坐薬ということで、子ども自身が緊張することも多く、坐薬が入れにくいこともあります。大きく息をさせたり、気をそらしたり、横向きの姿勢にしたりすると入れやすくなります。
 
5. 挿入した坐薬がでてきてしまった場合

すぐの場合……………もう一度入れましょう。
しばらくたった場合……吸収されていることも考えられるので、1時間くらい様子を見ましょう。
(判断がつかない場合、処方された病院や薬局に問い合わせましょう)
    1時間以上たった場合…ほぼ吸収されていると思われるので、効果が出るのを待ちましょう。



 
6. 2種類以上の坐薬が出た場合

30分程度あけて挿入してください。薬の種類により(先ほどお話しした「基剤」の違いにより)順番や空ける時間が変わってきますので、薬を渡されたときに確認しましょう。




このように、坐薬といっても種類や使い方は様々です。その都度、医師や薬剤師に効果・効能・使い方・保存法などを確認して、有効に使いましょう。

関連記事

「お薬の話」の記事一覧