内視鏡検査

検査のお話

2013年(平成25年)の日本人の死因で最も多かったのは「がん(悪性新生物)」であると厚生労働省は発表しました。
これは亡くなった方の約3割が、がんが原因で亡くなっているということを示していて、
日本人の約3人に1人ががんで亡くなっているということになります。
がんは、ここ30年間、日本人の死因の第1位になっています。
特に肺がん、胃がん、大腸がんは、男女ともに死亡率が高く、
「がん」と診断される患者さんの数も年々多くなっています。
しかし、がんで亡くなってしまう人の割合が増えている一方で、
近年の医学の進歩によって、がんになっても治るという人も増えています。

多くの「がん」は、早期に発見し、がんの広がりが小さいうちに治療を開始すれば、良好な経過をたどることが分かってきています。治らない「不治の病」だと考えられてきたがんは、医療の進歩とともに、治療することができる病気になってきており、現在では、がん全体で約6割の患者さんが完治できるとも言われています。
今回はこの「がん」の中でも「胃がん」「大腸がん」の検査や治療に欠かせない「内視鏡」についてお話ししようと思います。

内視鏡検査は、体の中の様子を、カメラを介してモニターに映し、それを医師が直接目で見る検査になります。
内視鏡検査の大きな特徴は「病変部位」を直接観察できることです。そして、何だかの病変があった場合、その位置や大きさだけでなく、拡がりや表面の形状(隆起や陥凹)、色調などから、病変の数やある程度の深達度が判断できます。

※補足ですが、現在の医療では、「胃カメラ」は用いません。「胃カメラ」とは、胃の中に小さなレンズと光を入れてフィルムで撮影する「カメラ」のことで、現在用いられている内視鏡はカメラを内蔵した機械ではなく、ファイバースコープやビデオスコープなど、胃の画像をリアルタイムで伝え、記録するものとなっています。
しかしながら、常用的に「胃カメラ」という言葉は一般的に浸透しておりますので、本コラムでも「カメラ」という表現を使用しております。

 

1.上部消化管内視鏡(胃カメラ)
上部消化管内視鏡(胃カメラ)は内視鏡の検査として最も頻繁に行われる検査で、口からスコープ(カメラ)を入れて食道、胃、十二指腸を観察します。
X線検査では見つかりにくいような微小な病変や識別しにくい病変なども、スコープ先端から色素を散布して病変部を目立たせて観察することで発見できることがありますので、病気の早期発見にすぐれています。また、観察するだけではなく、スコープ先端に鉗子を装着し、組織を採取して検査を行ったり、ポリープ等を直接切除することもできます。検査中に出血部位を認めた場合にはその場で「止血クリップ」というものを使用して止血することも可能です。

2.下部消化管内視鏡(大腸カメラ)
下部消化管内視鏡(大腸カメラ)は肛門からスコープ(カメラ)を挿入し、大腸粘膜を観察します。上部消化管内視鏡(胃カメラ)よりも長いスコープを用いて、大腸全域を観察します。大腸カメラも胃カメラと同様に検査の検体を採取やポリープの切除、出血部位の止血を行ったりすることが可能です。

通常観察色素散布組織採取ポリープ切除止血
   通常観察       色素散布        組織採取       ポリープ切除       止血

                                                (オリンパス株式会社HPより引用)


<上部および下部消化管内視鏡でわかる主な病変>

 食道  食道がん逆流性食道炎、ポリープ、食道静脈瘤など
 胃  胃がん胃炎胃潰瘍ポリープなど
 十二指腸  十二指腸がん、十二指腸潰瘍、ポリープなど
 大腸  大腸がん、大腸潰瘍、ポリープ、炎症(大腸炎)など

上部消化管疾患では「胸やけ」「食べ物がのどにつかえる感じがする」
「吐き気」「腹痛」「何となくお腹の調子が悪い」などの自覚症状が出る場合があります。
これらの症状がある場合には上部消化管内視鏡(胃カメラ)による
精密検査を行うことがあります。
早期の大腸がんは一般的には自覚症状がないことが多いと言われています。
そのために、多くの自治体や職場では大腸がんの好発年齢を迎えている方を対象として
早期発見を目的とする便潜血検査によるスクリーニング検査が実施されています。
この検査で陽性となった場合には下部消化管内視鏡(大腸カメラ)による精密検査を行います。

 「内視鏡は怖い」と思いがちですが、なるべく辛くないように鎮静剤を使います。
検査時間はスクリーニングであれば約10〜15分程度です。

冒頭にもお話ししましたが、「がん」は早期発見、早期治療が大切です。
「内視鏡検査」を行うことで的確な診断(発見)、治療ができますので、自覚症状のある方や便潜血検査で陽性となった方、ご家族に胃や大腸の病気がある方などはご相談ください。

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