胃がんや胃潰瘍の原因とされているヘリコバクターピロリ菌(ピロリ菌)。
テレビやラジオ、新聞などでも見かける機会が多くなってきました。
長い間、胃の中は胃酸のため強い酸性になっているので、
細菌が生存していて病気をおこすとは考えられていませんでした。
しかし現在では、胃の中に生存するピロリ菌と胃炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、
胃がんなどには密接な関係があることがわかっています。
今回は胃潰瘍の真犯人と思われているピロリ菌についてお話します。日本人はピロリ菌の罹患率が高く、全国民の半数の約6,000万人がピロリ菌に感染していると考えられています。
その中でも40歳以上では約70%、50歳以上では約80%と高齢になるほど割合は増していきます。ピロリ菌は幼少期に感染すると考えられおり、50歳以上の方は戦後の衛生状態が悪い時代に生まれ育ったために高い感染率を示していると考えられています。
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〜 ピロリ菌が関係している病気 〜 |
胃炎
ピロリ菌に感染するとほぼ100%の人が軽い胃炎をおこすと言われています。
症状は少し胸がむかむかして、軽い上腹部痛がある程度ですが、ごく稀に激痛を伴う急性胃粘膜病変が発症します。胃粘膜細胞に接着したピロリ菌に対して、炎症反応が起こるため胃炎が発症すると考えられています。
胃潰瘍、十二指腸潰瘍
ピロリ菌に感染すると胃潰瘍や十二指腸潰瘍を発生する頻度が高くなり、感染者の2〜5%に潰瘍がみられると言われています。潰瘍患者では胃潰瘍で約90%、十二指腸潰瘍ではほぼ100%にピロリ菌が感染していると言われています。
潰瘍のほとんどは薬剤治療で治りますが、ピロリ菌が陽性の場合は高率で再発をおこすため除菌療法が勧められています。
胃がん
疫学的な調査ではピロリ菌と胃がんには関係があることがわかっています。ピロリ菌感染者は感染していない人に比べて約6〜22倍の頻度でがんを発症すると言われています。
また、ピロリ菌の感染率の高い地域では胃がんの死亡率が高いこともわかっています。ピロリ菌感染者のうち胃がんが発症するのは0.5%以下ですが、胃がん患者からみた場合90%以上の人がピロリ菌に感染していると言われ、1994年にはWHOがピロリ菌を胃がんの発がん因子と指定しています。
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〜 ピロリ菌の感染経路 〜 |
はっきりとした感染経路は明らかとはなっていません。
感染経路はいくつかの説があげられています。
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口−口感染(歯垢やだ液からピロリ菌が検出された)
糞−口感染(ふん便からピロリ菌が検出された)
飲料水からの感染(海外で水道水からピロリ菌が検出されたところもある)
動物を媒体とした感染(ハエ・ネコなど)
内視鏡を媒体とした感染10年以上前には、「内視鏡を媒体としたピロリ菌感染」が注目されましたが、日本消化器内視鏡学会から「内視鏡の洗浄、消毒に関するガイドライン」が出され、内視鏡の洗浄・消毒が厳重になされるようになりました。
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当院でもこのガイドラインに準じた洗浄・消毒を行っています。 |
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〜 ピロリ菌の検査方法 〜
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ピロリ菌の検査にはいくつかの方法があります。
<内視鏡による検査>
内視鏡検査をおこない、組織を取り、直接的にピロリ菌の有無を確認します。 |
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○培養法:組織を培養し、ピロリ菌が発育するかを見る検査です
○組織鏡検法:採取した組織を顕微鏡で観察し、ピロリ菌の有無を調べる検査です。
○迅速ウレアーゼテスト:採取した組織を特殊な液に反応させて菌の有無を判定する検査です。
迅速、簡便で精度も高い迅速ウレアーゼテストが検査の中心となっています。
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<その他の検査> |
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○尿素呼気試験:検査薬を飲む前後の呼気を集めて分析する検査です。
○血液検査:血液中のピロリ菌に対する抗体を調べる検査です。
○便検査:便中のピロリ菌を調べる検査です。
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これらの検査の中では尿素呼気試験が最も簡単で精度も高いとされています。どの検査法にも長所と短所がありますので、医師とよく相談して下さい。ピロリ菌の除菌については、今までは胃潰瘍、十二指腸潰瘍のある患者に限って保険適応が認められていましたが、2010年6月より次の疾患にも適応が認められています。
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①早期胃がんに対する内視鏡的治療後
②特発性血小板減少性紫斑病
③胃MALTリンパ腫
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〜 ピロリ菌の治療 〜
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ピロリ菌の治療(除菌)には抗生剤2剤とプロトンポンプ阻害剤(制酸剤)の計3剤を併用します。1週間、薬を飲むことによって70〜80%の方が除菌に成功しています。きちんと除菌すると、その後は潰瘍の薬を飲む必要はなくなり、再発もほとんどないと言われています。しかし、除菌治療を途中でやめたりすると、ピロリ菌が薬に対して耐性をもち、次に除菌しようと思っても薬が効かなくなるおそれがありますので、必ず医師の指示通りに薬を飲むことが大切です。
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