お薬の話
冬真っ盛りとなりましたが、巷のインフルエンザの流行はピークを迎えた頃でしょうか。 インフルエンザについては以前もこのコラムへ掲載していますが(お薬の話PART7、PART25)、今回はその最新の情報も交えてQ&A形式で改めてご紹介します。Q.1: インフルエンザと普通の風邪はどう違うのですか?
一般的に、風邪は様々なウイルスによって起こりますが、普通の風邪の多くは、のどの痛み、鼻汁、くしゃみや咳等の症状が中心で、全身症状はあまり見られません。発熱もインフルエンザほど高くなく、重症化することはあまりありません。 一方、インフルエンザは、インフルエンザウイルスに感染することによって起こる病気です。38℃以上の発熱、頭痛、関節痛、筋肉痛、全身倦怠感等の症状が比較的急速に現れるのが特徴です。併せて普通の風邪と同じように、のどの痛み、鼻汁、咳等の症状も見られます。お子様ではまれに急性脳症を、御高齢の方や免疫力の低下している方では肺炎を伴う等、重症になることがあります。 Q.2: インフルエンザはいつ流行するのですか?
季節性インフルエンザは流行性があり、いったん流行が始まると、短期間に多くの人へ感染が拡がります。 日本では、例年12月〜3月が流行シーズンです。 Q.3:ワクチンの接種を受けたのに、インフルエンザにかかったことがあるのですが、ワクチンは効果があるのですか?
インフルエンザにかかる時はインフルエンザウイルスが口や鼻から体の中に入ってくることから始まります。体の中に入ったウイルスは次に細胞に侵入して増殖します。この状態を「感染」といいますが、ワクチンはこれを完全に抑える働きはありません。 ウイルスが増えると、数日の潜伏期間を経て、発熱やのどの痛み等のインフルエンザの症状が起こります。この状態を「発症」といいます。ワクチンには、この発症を抑える効果が一定程度認められています。 発症後、多くの方は1週間程度で回復しますが、中には肺炎や脳症等の重い合併症が現れ、入院治療を必要とする方や死亡される方もいます。これをインフルエンザの「重症化」といいます。特に基礎疾患のある方や御高齢の方では重症化する可能性が高いと考えられています。 ワクチンの最も大きな効果は、この重症化を予防する効果です。 ワクチンを接種してもインフルエンザにかからない、というわけではありません。ワクチン接種の有無にかかわらず、日頃からうがいや手洗い、マスクの着用などをこころがけることはとても大事ですね。 Q.4: 昨年ワクチンの接種を受けましたが今年も受けた方がよいでしょうか?
季節性インフルエンザワクチンでは、これまでの研究から、ワクチンの予防効果が期待できるのは、接種した(13歳未満の場合は2回接種した)2週後から5か月程度までと考えられています。 また、インフルエンザワクチンはそのシーズンに流行が予測されるウイルスに合わせて製造されています。このため、インフルエンザの予防に充分な免疫を保つためには毎年インフルエンザワクチンの接種を受けた方がよい、と考えられます。 Q.5: 「4価ワクチン」とはどのようなものですか?今年のワクチンは、どの種類のインフルエンザに効果がありますか?
今年度の季節性インフルエンザワクチンは、インフルエンザA(H1N1)亜型(インフルエンザ(H1N1)2009)と同じ亜型)、A/H3N2亜型(いわゆるA香港型)、B型(山形系統)、B型(ビクトリア系統)の4種類が含まれたワクチン(いわゆる4価ワクチン)です。 なお、これまでは3種類が含まれたワクチン(いわゆる3価ワクチン)でしたが、近年、インフルエンザB型の流行が2系統(山形系統とビクトリア系統)のウイルスが混合していることから、平成27年度より4種類が含まれたワクチン(いわゆる4価ワクチン)を導入しています。 Q.6: インフルエンザワクチンの接種によって、インフルエンザを発症することはありますか?
インフルエンザワクチンは不活化ワクチンです。不活化ワクチンは、インフルエンザウイルスの活性を失わせ、免疫をつくるのに必要な成分を取り出して病原性を無くして作ったものです。 したがって、ウイルスとしての働きはないので、ワクチン接種によってインフルエンザを発症することはありません。 Q.7: インフルエンザの治療薬にはどのようなものがありますか?
インフルエンザに対する治療薬としては、下記の抗インフルエンザウイルス薬があります。 ・オセルタミビルリン酸塩(商品名:タミフル) ・ザナミビル水和物(商品名:リレンザ)…当院未採用 ・ペラミビル水和物(商品名:ラピアクタ) ・ラニナミビルオクタン酸エステル水和物(商品名:イナビル) ・アマンタジン塩酸塩(商品名:シンメトレル等)(A型にのみ有効) ただし、その効果はインフルエンザの症状が出始めてからの時間や病状により異なりますので、使用する・しないは医師の判断になります。 抗インフルエンザウイルス薬の服用を適切な時期(発症から48時間以内)に開始すると、発熱期間は通常1〜2日間短縮され、鼻やのどからのウイルス排出量も減少します。なお、症状が出てから2日(48時間)以降に服用を開始した場合、十分な効果は期待できません。効果的な使用のためには用法、用量、期間(服用する日数)を守ることが重要です。 昨シーズンからインフルエンザワクチンの接種料金が上がったな、と感じたかたも多かったのではないでしょうか。 Q5にあるように3価から4価ワクチンへ変わったため、ワクチン代の価格自体が上がったからなのです。 Q.8: インフルエンザにかかったら、どのくらいの期間外出を控えればよいのでしょうか?
一般的に、インフルエンザ発症前日から発症後3〜7日間は鼻やのどからウイルスを排出するといわれています。そのためにウイルスを排出している間は、外出を控える必要があります。 排出されるウイルス量は解熱とともに減少しますが、解熱後もウイルスを排出するといわれています。排出期間の長さには個人差がありますが、咳やくしゃみ等の症状が続いている場合には、不織布製マスクを着用する等、周りの方へうつさないよう配慮しましょう。 参考までに、現在、学校保健安全法(昭和33年法律第56号)では「発症した後5日を経過し、かつ、解熱した後2日(幼児にあっては、3日)を経過するまで」をインフルエンザによる出席停止期間としています(ただし、病状により学校医その他の医師において感染のおそれがないと認めたときは、この限りではありません)。 Q.9: インフルエンザにかからないためにはどうすればよいですか?
インフルエンザを予防する有効な方法としては、以下が挙げられます。 1) 流行前のワクチン接種 2) 飛沫感染対策としての咳エチケット インフルエンザの主な感染経路は咳やくしゃみの際に口から発生される小さな水滴(飛沫)による飛沫感染です。したがって、飛沫を浴びないようにすればインフルエンザに感染する機会は大きく減少します。 言うことは簡単ですが、特に家族や学校のクラスメート等の親しい関係にあって、日常的に一緒にいる機会が多い者同士での飛沫感染を防ぐことは難しいです。また、インフルエンザウイルスに感染した場合、感染者全員が高熱や急性呼吸器症状を呈してインフルエンザと診断されるわけではありません。 たとえ感染者であっても、全く症状のない(不顕性感染)例や、感冒様症状のみでインフルエンザウイルスに感染していることを本人も周囲も気が付かない軽症の例も少なくありません。普段から皆が咳エチケットを心がけ、咳やくしゃみを他の人に向けて発しないようにしたり、咳やくしゃみが出るときはできるだけマスクをしたりするようにしましょう。 3) 外出後の手洗い等 流水・石鹸による手洗いは手指など体についたインフルエンザウイルスを物理的に除去するために有効な方法であり、インフルエンザに限らず接触や飛沫感染などを感染経路とする感染症の対策の基本です。インフルエンザウイルスはアルコールによる消毒でも効果が高いですから、アルコール製剤による手指衛生も効果があります。 4) 適度な湿度の保持 5) 十分な休養とバランスのとれた栄養摂取 6) 人混みや繁華街への外出を控える (枠内はすべて厚生労働省ホームページより引用・改変)
うつらないため、うつさないために、是非これらを実践して、みなさんも健康管理をしっかりして下さいね。 * 当院でのインフルエンザワクチン接種は、16歳以上の方に限らせていただいております。 |