お薬の話
結論から言うと粉砕してよいものと悪いものがあります。
まずは錠剤の種類を一部紹介します。
錠剤の種類 | 特徴 |
---|---|
① 素錠 | 薬の有効成分に添加物を加えて圧縮成形したもの |
② フィルムコーティング錠 | 高分子化合物などで薄く覆ったもの |
③ 糖衣錠 | 錠剤を糖で薄く覆ったもの |
④ 口腔内崩壊錠 | 口の中ですぐに溶解または崩壊するもの |
⑤ 腸溶錠 | 胃酸で分解せず、腸で溶解するもの |
⑥ 徐放錠 | 薬の成分がゆっくり出るよう設計されたもの |
成形したままの錠剤なので、基本的に粉砕しても問題ありません。
例:
ビルダグリプチン錠(エクア®錠)、ロキソプロフェン錠(ロキソニン®錠)
苦みやにおいを軽減したり、光や湿気に弱い薬の安定性を高めたりする効果があります。
したがって、粉砕すると苦みが出たり、光や湿気により薬の効果が低下したりするものがあります。
例:
L-アスパラギン酸カリウム錠(アスパラカリウム®錠)→吸湿性がより高まり、効果減弱、胃腸障害出現の可能性
バラシクロビル錠(バルトレックス®錠)→苦みが出現
中には薬によって粉砕してもあまり影響ないものもあります。
例:
アムロジピン錠(アムロジン®錠)、エチゾラム錠(デパス®錠)など
薬品名に「D(=Disintegrating)」や「OD(=Oral Disintegration)」などの英文字が含まれています。以前にも掲載していますが(水なしでお薬が飲める?! 口腔内崩壊錠とは? )口の中ですぐ溶解するので粉砕する必要はありません。粉砕して問題ないものが多いです。
例:
ファモチジンD錠(ガスター®D錠)、リクシアナ®OD錠
しかし、粉砕を避けたいものも一部あります。
例:
ソリフェナシンコハク酸塩OD錠(ベシケア®OD錠)→苦みが出現
ランソプラゾールOD錠(タケプロン®OD錠)→腸で溶解して長く効果が続くように設計されているので粉砕により効果減弱
胃酸により効果がなくなるのを防いだり、胃腸障害を軽減したり、長く効果を持続させる、などの効果があります。粉砕するとその効果がなくなる恐れがあるので基本的に粉砕はNGです。
例:
アスピリン腸溶錠(バイアスピリン®錠)→胃腸障害の出現
メサラジン腸溶錠(アサコール®錠) →大腸に作用するように設計されているので粉砕により効果が無くなってしまう
長く効くので服用回数を減らすことが出来ます。薬品名に「CR(=Controlled Release)」や「R(=Retard)」、「LA(=Long Acting)」などと表記されるものが多く、錠剤自体に工夫がなされています。粉砕すると一気に体へ取り込まれることにより薬の効果が急激に出てしまい重篤な副作用が出る恐れがあるため、粉砕NGです。
例:
ニフェジピンCR錠(アダラート®CR錠)→急激に血圧が下がる恐れ
ベタニス錠 →効果が続かない恐れ
いかがだったでしょうか?同じ種類の錠剤でも粉砕してよいものとダメなものがあり、薬品名だけでは判断できないことがおわかりいただけたと思います。
このような粉砕に適さない薬の場合であっても細粒や粉の薬へ処方を変更したり、以前このコラム内でも紹介した簡易懸濁法 を試してみたりするなどの選択肢もあります。
薬の飲みづらさを感じている方がいらっしゃいましたら、自己判断で粉砕せずに医師や薬剤師へ是非ご相談下さい。
2025年1月 薬剤科