血液型

検査のお話

誰もが持っている血液の情報の1つ、『血液型』について今回は見ていきたいと思います。
血液型で性格が解る、親の血液型によって絶対に生まれない血液型があるらしい・・・
などと皆さん色々と聞いたことがある話は多いと思いますが、実際のところはどうでしょうか。
当院で行っている検査のお話と共に簡単に説明したいと思います。

◎血液型の種類

日常的に耳にする血液型と言えば、A型やB型といったものが思い浮かぶ方が多いのではないでしょうか。
献血に行かれた方はそれに加えてご自身のRh型もご存知かもしれません。

実は血液型は全部で300種類以上存在していますが、ABO血液型、Rh血液型の2種類の血液型が一般的に用いられています。

①ABO血液型
ABO血液型は以下の4種類に分類され、人種によって割合に差があるのも大きな特徴になります。

 

日本人

白人

黒人

A型

40%

40%

25%

B型

20%

10%

20%

O型

30%

45%

50%

AB型

10%

5%

5%

②Rh血液型
Rh血液型は細かく分類するとD、C、c、E、eという因子の有無で18通りに分けられます。
但し、私たちが普段目にしているRh(+)、Rh(−)は上記のうちのD因子の有無のみを示しています。
こちらも人種により以下のように割合に大きく差が出ます。

 

日本人

白人

黒人

Rh(+)

95.5%

85%

92%

Rh(−)

0.5%

15%

8%

                  では、結局これらを決めるのは何なのでしょう。

・ABO血液型を決める物質は赤血球の表面にある糖鎖という物質でこれを抗原と言います。
 A型の人とB型の人はそれぞれがA抗原、B抗原を赤血球上に持ち、O型はA抗原、
B抗原の両方を持たず、AB型はA抗原、B抗原の両方を持っているということで定義されています。

・Rh血液型を決める物質は赤血球の表面にあるタンパク質でこちらも抗原と言います。
Rh(+)の人はD抗原を赤血球上に持ち、Rh(−)の人はD抗原を持たないということで
定義されます

 

例としてABO血液型の定義を下図で示します。

以上の事を踏まえて、血液型の検査を進めていくことになります。


◎血液の成分について

血液型の検査の話を進めやすくするために、ここで血液の成分についてお話しします。
採血をしたことがある方は目にしたこともあると思いますが、それぞれの検査に適した処理が行えるように採取した血液を決まった容器に分けます。

血液型の検査に用いる血液は採血後に以下の2通りの方法で処理を行います。
①血液が固まらないようにする薬剤(抗凝固剤)の入った容器に入れて遠心分離をする。
②血液を固まらせて(抗凝固剤は入れず)遠心分離をする。
※当院では①の方法を用いています。

①と②の処理後の検体の液体成分を便宜上『血漿』と『血清』と言います。

◎抗原と抗体について

血液型を決める物質として『抗原』の説明をしましたが、その抗原と密接な関係をもつ
『抗体』という物質が血液の中には含まれています。
血液型抗原が赤血球表面にあるのに対して、抗体は血清(血漿)成分に含まれています。

抗体にも大きく分けると自然抗体、免疫抗体という2種類がありますが、今回は血液型に関係する自然抗体のみに絞ってお話しします。

血清(血漿)成分に抗体が含まれていると書きましたが、血液型に関する抗体は血液型抗原と同様に、血液型の違いによって定義があります。

               血液型によって下の表の通りに保有する抗体に違いがあります。
                     (解りやすいように抗原と一緒に見てみます。)

 

保有する抗原

保有する抗体

A型

A抗原

抗B抗体

B型

B抗原

抗A抗体

O型

抗原なし

抗A抗体、抗B抗体

AB型

A抗原、B抗原

抗体なし

・・・なんとなく抗原と抗体が対称的になっている気がしますね。
この関係がとても重要になります。

抗体は抗原に対して反応する物質で、決まった抗原としか反応しません。
この反応を『抗原抗体反応』と言い、抗原と抗体が結合することを言います。
その為、自分の赤血球に反応する抗体が体の中にあっては簡単に血液が固まってしまうので誰でも生まれた時から自分の赤血球抗原に反応しない、且つ、別の赤血球抗原を異物と認識出来る抗体を血液中に持っています。

◎血液型の検査

血液型の検査は輸血や献血をする際に非常に重要となってきます。
輸血は大量出血などの緊急時に非常に効果的とされていますが、その一方で副作用があるのも事実です。
副作用の中で最も重篤な症状を引き起こす原因がABO血液型の異型輸血(違う血液型の血液を輸血すること)になります。
輸血の際にそれらの副作用が起こらないように前以て最低限の検査を行います。

以下、当院で行っている輸血に関する検査項目になります。
①ABO、Rh血液型検査
②不規則性抗体スクリーニングおよび同定検査
③交差適合試験(クロスマッチ)

今回はこの中からABO、Rh血液型の検査を少しお見せします。

上の試薬を使用して2つの検査を同時に行います。
人為的に抗原抗体反応を起こして反応が見られるものを陽性とします。

①オモテ試験
あらかじめ含まれている抗体が解っている試薬(抗血清)を使って赤血球の抗原を調べます。
可視的に解りやすいように抗A試薬は青色、抗B試薬は黄色、抗D試薬は無色と決まっています。
抗A試薬で固まればA抗原あり、抗B試薬で固まればB抗原あり、抗D試薬で固まればD抗原ありと判定します。

②ウラ試験
あらかじめ抗原が解っている血球試薬を使って血清(血漿)中の抗体を調べます。
A血球が固まれば抗A抗体あり、B血球が固まれば抗B抗体ありと判定します。
(当院では陰性の比較対照としてO血球も使用しています。)

          
↑A型Rh(+)                ↑B型Rh(+)                ↑O型Rh(+)

    
↑AB型Rh(+)                ↑A型 Rh(−)

血液型の判定時の写真です。
稀な血液型はお見せ出来ませんが、以上が一般的な反応になります。
是非、自分の血液型がどのように反応するかチェックしてみてください。

最後に、生まれたばかりの赤ちゃんの血液では反応が弱く誤判定が多い為、現在は出生時に血液型を調べる施設が減ってきています。
献血時には必ず検査をしますし、検査室のある病院では血液型の検査を行っていることも多いため自分の血液型をご存知ない方や興味のある方は一度調べてみてはいかがでしょうか。

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